研究内容 - 茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター 物質構造物理研究室

茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター 物質構造物理研究室のHPです。
Material Structure Physics Lab., Frontier Research Center for Applied Atomic Sciences,
Ibaraki University, Tokai, Japan

Material Structure Physics Lab.


updated 2017.4.8

研究目的

g4-2_Multipole_Spin.jpg [(左図)格子点の各原子ごとに電子の軌道が規則配列する一例。
(右図)原子の磁石であるスピンが形作るスピン分子現象の一例。
球は原子、矢印はスピン、太線はスピンベンゼンを表す。カゴメ紋
(ダビデの星)に見える模様が自然界に存在し、かつ、その六角形
を使ってベンゼン環を形成するとは驚きである。]
電子自由度の多彩な花が咲く物質

 物質中に存在する膨大な数(およそ10の23乗個)の原子と電子の集団は、個々だけでは予想もつかない多様な性質「物性」(例えば超伝導・磁性・金属から絶縁体への転移)を示します。電子がもつ自由度である電荷・スピン・軌道を「花」に喩えます。その集団の配列と運動をミクロに観測することが大切です。花として電子雲の形である「電子軌道」を考えてみます。各原子での電子の運動は、ある温度以下では花弁のような特殊な軌道を占め、全ての原子上で規則正しく配列するエネルギー的に安定な物理状態が実現します(下左図)。物性の発現はこうした桜の花の如くに「美しく揃った電子の状態」と言えます。また「花」が存在する原子位置が幾何学的に特異な条件を満たすと、一つの構造パターンでは表現できず、あちらで咲いた花のおかげでこちらが咲けないフラストレーション状態も実現します。しかし一見ランダムな咲き方に見えつつも、実は花同士には向きや運動の特別な関係が存在しえます。下右図は、フラストレーションのあるCr酸化物などで見られる花としてスピン(電子による原子レベルの磁石)を考えたときに局所的に現れる分子状構造です。本研究グループは、無数の電子の協力現象を花の咲き方としてミクロに探ることで、新しい物性の起源を引きだすことを目指した「物性物理学」を追究しています。


研究の手法

電子の花を見るために ー中性子散乱とX線散乱ー

g4-2_Multipole_Spin.jpg 中性子(左)とX線 (右) の散乱実験装置(クリックで中性子装置のサイトへリンク)。]LinkIcon  私たちが目で物体を見るときには可視光を使っています。では、物質内の10の-10乗m程度の電子の花の規則配列を見るための光は何か?本研究グループでは「中性子線とX線」を光として物質で散乱させる手法を用いています。
 中性子は伝播する波の性質をもち、物質中での回折現象によって原子核や原子磁石(磁気モーメント)を見ることができます。つまり原子配列構造に加えて磁気構造も比較的容易に明らかにできます。さらに散乱前後の中性子の運動量とエネルギーの変化から、スピン波や格子振動などの集団運動が観測できます。我々は波長が短い光であるX線、特に、シンクロトロン放射光により得られる高輝度かつ波長や偏光を制御できるX線も用います。中性子散乱、大学内の実験室のX線回折および放射光X線散乱を併用して、新たな電子花模様の観測やそれが現れる仕組みの解明を狙っています。

  • 中性子散乱実験(日本原子力研究開発機構・東大物性研中性子散乱研究施設、J-PARC中性子散乱施設)
  • 放射光X線散乱実験(KEK Photon Factory(つくば)、SPring-8(播磨))


テーマごとの解説


研究と教育の方針

 「スピン・軌道・電荷」の配列に関わる物性を、以下の系統立てた手法で解明します。
  • 典型物質の探索や開発、試料育成
  • 基礎物性測定による物性探索
  • 中性子とX線による電子状態の解明
  • 新しい散乱実験の手法や装置の開発(現在、上述の中性子分光器を改造中。)
 世界有数の施設のみで利用できる中性子線(日本原子力研究開発機構(東海)の研究用原子炉JRR-3や大強度陽子加速器施設J-PARCなど)や放射光X線(KEK Photon Factory(つくば)、SPring-8(播磨)など)の最先端散乱実験法と文殊の知恵を駆使して、「新しい電子の花と咲き揃い」の発見を学生の皆さんと共に目指しています。Join us!


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