スクッテルダイト - 茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター 物質構造物理研究室

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Material Structure Physics Lab., Frontier Research Center for Applied Atomic Sciences,
Ibaraki University, Tokai, Japan

Material Structure Physics Lab.


updated 2016.4.29

スクッテルダイトの物理

スクッテルダイト(skutterudite)とは

RT4X12.jpgその名前がノルウェーの鉱山のある地名に由来するスクッテルダイトTX3 (T:遷移金属Co、Feなど、X:プニクトゲンP , As , Sb)と呼ばれる金属化合物は、頂点を共有したXの八面体構造にTが囲まれた結晶構造(体心立方晶)をとる。この物質には比較的に大きな隙間が存在するため、希土類元素、アクチナイド元素、あるいはやBa , Na , Kなど他の種類の元素を入れた「充填スクッテルダイトRyT4X12(y≦1)」  が数多く合成されている。結晶構造を図に示した。この物質群では大きく分けて二つの観点から興味が 持たれている。 


スクッテルダイトの物性

まず、充填スクッテルダイトでは、元素の組み合わせにより、磁性体(強磁性、反強磁性)、超伝導、金属・半導体・絶縁体とそれらの間の相転移などを示すものが次々と発見されている。しかも共通の結晶構造でそれらの多様な物性が現れるため、物性現象の原因を系統立てて探ることが可能である。希土類元素を充填した場合、その最外殻にあって相転移の役目を担うと考えられる4f電子がどのような物理状態にあるのかを調べる基礎的な物性物理学研究が、日本全国のみな らず世界各地の研究者によって行われている。我々の研究室で対象としている,テーマとして例えばPrFe4P12の電気抵抗が100Kくらいの温度では低温度に向かって大きくなり、しかしながら6.5K以下で突如として減少する相転移を示す現象がある。この普通の金属とはまるで異なる振る舞いを、Prイオンの4f電子がある特別な運動状態と軌道秩序にあるからと考え、その状態を調べるため化合物の合成および中性子散乱や X線回折実験を行っている。その他、PrRu4P12の金属-絶縁体転移、PrOs4Sb12の超伝導と電子軌道秩序などを研究対象としている。

最近では、金属ー非金属転移を示すPrRu4P12におけるPrイオンの4f電子が多極子秩序構造(研究内容のページの図と説明を参照)の特徴を深く研究してきた。特に、PrイサイトへのCeイオン置換やRuサイトへのRh置換によってこの非金属秩序構造はリエントラントな相転移と変貌し、最低温相で新たな金属相に相転移することを研究してきた。

応用への期待

さらに、廃熱(自動車やゴミ処理施設の排気ガスの熱)を電気エネルギーに変換したり、電力による加熱・冷却素子(電子冷蔵庫、光ファイバー通信増幅回路の温度制御)としての高い熱電性能が最近注目されている。TX3の結晶構造が金属的な電気伝導をもたらす。同時に、隙間にあって比較的緩く他の原子と結合しているR元素の局所的に大きな原子振動によって、伝搬する格子振動の波による熱伝導を低くしていると考えられる。このことは、電気伝導が十分でありながら、素子の両端での温度差を保持 することができることを意味し、工業的に有用な高い熱電性能につながる"Electron Crystals and Phonon Glasses" と称される状態を作り出している。この熱電性能に関連する原子振動状態の観測と低温相転移との関連も、中性子散乱やX線回折実験により調べている。このように充填スクッテルダイトは新たな物性の発見とそれを理解する新たな概念を切り開く宝庫と言える。

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